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東亭順-変容する空の形
荒木夏実(森美術館キュレーター) 東亭順は、自ら撮影した空の写真にアクリル絵具で彩色し、ニスを塗りヤスリで研磨するという工程を経て作品を完成させる。手を加えてつるりとした平面体に仕上げられた空は、作家が見た時の体験からは遠く離れ、移ろい行く記憶と忘却の中を曖昧に漂っている。時に天地を逆転させたり、新たなものを描き加えることによって、リアリティーや記憶はさらに屈折したものになる。そのぼんやりとしたイメージは抽象の世界に到達しているともいえるが、それでもなお、ロマンチックで、凡庸で、美しい「空」というモチーフは存在し続け、東亭の作品を古典的ともいえる「絵画」たらしめている。 今回のギャラリー同潤会での展覧会で、東亭は従来の趣向とは異なる実験を行っている。まず会場で目に入るのは、床に出現したインスタレーション「Mirage」である。盛り上げられた砂の中央に楕円形の空の絵画が埋め込まれている。その磨かれた表面は光を発しているように見え、湖面に映った風景、あるいは地底のイメージを映し出しているかのようだ。それと呼応するように周りの壁には直径18センチの円形の作品「Float / circle」が7点、リズミカルに並べられている。矩形のフレームの天地から解放された円形の空は、モチーフからより自由になって方々に散らばる。実際、展示するときの位置はかなりフレキシブルで、気分によって角度を変えることができるのだという。その題名のとおり、浮かび、回転し、一点一点が動体となって自在に変化していく。 東亭はこの展示で、あえて彼の特徴であったモチーフや型という絵画の掟から抜け出してみたかったのではないだろうか。そこに現れたものは、生々しい命と自然の気配である。空に暗示される地球の息づかい、変幻する有機体のもつ湿気は、手を加えられて安全なものになった絵画の居心地のよさを裏切る。「Mirage」の石庭のように丹精に整えられた砂は、洗練された趣と同時に、クレーターか蟻地獄のような一種の不気味さをもかもし出している。地面から突起するこの物体は、まず見る人に身体的に訴える力をもつ。これまでの、虚と実、記憶の追及、肌触りを消すことによって生まれる風景といった絵画的テーマとは質を異にする、より直接的に感覚に訴えるアプローチだといえよう。それは対峙する人の五感を刺激する装置としてはたらく。 「装置」への関心は、床の作品と同名の、薄い布と光を使った立体作品からもうかがえる。それは白と黄色の布を何層かに重ねて作られた部屋状のインスタレーションで、中に設置されたライトが布をふわりと照らし出している。設置場所や形状の点で作品としてやや未消化である感は否めないが、作家の言う「舞台装置のような」作品への試みは理解できる。作品と作品の関係によって生じるリズム、作品によって引き起こされる鑑賞者の身体感覚。場のダイナミズムを作り出すことが、本展の大切なテーマといえるだろう。欲を言えば、表参道を行き来する人々の風景を、画廊の窓を通してより積極的に展示に引き込んでもよかったのではないかと思う。 東亭のトレードマークともなった空のモチーフは、彼の強みであり、同時に弱みでもある。消し去ろうとしてもなお残る強い叙情性は、「美しい絵画」をあまりにも強固に支持する。そこから脱却する本展の試みは、たとえ手探りであっても、作家の将来にとって意義深いものであるに違いない。東亭の空がどんな冒険をし、進化を遂げるのか、今後が楽しみである。
by gallerydojunkai
| 2006-05-14 12:21
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